美味しい食事には、必ず美味しいお酒が共にある。その役目を果たしてくれるのが「チャコリー」。チャコリーは、少なくとも800年前からカンタブリア海沿岸及び内陸部のブドウ畑で作られているワインである。古くからこの地方の農村で親しまれてきた飲み物だが、産業の発展による農村地帯の衰退と、ヨーロッパほぼ全域のブドウ畑を壊滅状態にしたブドウの病気が原因で、チャコリーの生産は大きく落ち込んだ。

しかし、多くのワイン生産者や行政などの公的機関の協力の元、この地方のブドウ畑は見事に復活を遂げた。現在では、D.O.ゲタリアコ・チャコリニャ、D.O.アラバコ・チャコリニャ、とD.O.ビスカイコ・チャコリニャの3つのD.O.(原産地呼称)が存在する。

チャコリーは、豊かな香りと爽やかな酸味が特徴的な白ワインの一種である。使用されているブドウ品種は、この地の土着品種の「オンダラビ・スリ(白ブドウ)」と「オンダラビ・ベルツァ(黒ブドウ)」が主で、D.O.によっては、フォル・ブランシュ、グロ・マンサン、プティ・マンサンなどの品種も使用されているが、ごく一部である。これらのブドウは、日照時間が少なく気温が低いカンタブリア海岸沿いの複雑な気候に最適な品種だ。

土地のお酒にぴったりなマリアージュはその土地の料理だとはよく言われることであるが、チャコリーの場合もまさにその通りだ。複雑なアロマと爽やかな酸味を持つチャコリーは、7~10℃に冷やし、白ワイン用グラスでサーブすることが薦められている。この地方では魚や魚介類の料理と合わせるのが伝統的ではあるが、海産物のみならず、チャコリーはどんな料理にも合わせられる柔軟性とポテンシャルを持ったワインである。