カンタブリア海の沿岸部で重宝されているこの食品は、強いアロマと独特な食感、そして赤みがかった身が特徴的です。生食、素揚げ、また、衣をつけて揚げたり、煮たり、酢漬けや塩漬けなど、様々な調理法で食べることができます。

 

アンチョアは、長さ15cm前後の小さな魚で、その色味も重要な特徴の一つです。濃い青色から淡い灰色までバリエーションがあり、側面には必ず銀色の筋が入っています。

 

4月から7月にかけて、カンタブリア海の沿岸には非常に多くのアンチョアがやってきますが、漁は7月から9月にかけて行われます。稀に11月から12月に捕獲される場合もあり、この時期のアンチョアは「戻りアンチョア」と呼ばれます。

 

アンチョアの塩漬けは伝統と職人技の同義語と言っても過言ではありません。19世紀頃から生産されており、興味深いことに、イタリア人がきっかけでこの食品作りは始まりました。当時、イタリアでのこのいわしの漁獲量が減ったことで、スペインにアンチョアを求めて来た彼らが、最初にアンチョアの保存方法として塩漬けの技術を用いたのです。今日のアンチョアの塩漬けは熱による品質の劣化を防ぐため、殺菌の工程を行わない半保存食品となっています。

 

製造工程は職人による手作りで、アンチョアの熟成期間の6ヶ月間の工程は、全て手作業で行われます。この半保存食品を作るにあたっては、塩漬けと半身(フィレ)にしてからの二段階の工程があります。

 

アンチョアの塩漬けの工程では、最初に工場に届いた魚に塩をまぶし、塩水の中で1〜2日寝かせます。その後、塩水から取り出し、頭と内臓を除去し、大きさによって選別したアンチョアをそれぞれ10キロか5キロの保存容器に魚と魚の間に塩を引いて並べます。熟成期間が終わると、容器の蓋を取り、アンチョアを塩水で洗い、再び塩を引いて缶に詰められ、保存工程へと進みます。

 

半身(フィレ)の保存工程は、まず、熟成期間を経て塩を落としたアンチョアを再度塩水に入れます。その後、手作業で尻尾と骨を取り除いて半身にし、遠心分離機でアンチョアの水分を抜きます。最後に、アンチョアを缶に並べ、オイルで浸す最終工程を経て、製品へと仕上がります。

 

独特の味わいと食感をもつアンチョアの塩漬けは、唯一無二での食品であり、舌が肥えた食通たちの間で高く評価されています。